2022S 08ハードコアカルテル/09業務提携・垂直的制限
対面コマ 2022-05-06
この日の授業の記録は、前半はうまくいきましたが、後半は失敗しました。
前半 授業の記録をいつもの場所に掲げています。
後半(共同配送のみ)
動画等の代わりに、このページの末尾にメモを書き込みました。
お知らせ
対面コマの記録は、これまでどおり、音声入り動画を学内限定YouTubeチャンネルに掲げるのみとします。
5月13日(金)に補講をします。6月に休講となる可能性のあるコマがあるためです。休講とする場合は、前週などに知らせます。休講する必要がなくなった場合などは、適宜の回をナシにして、全体で26コマになるようにします。
Googleフォーム
(終了)
お題:Booking.com公表文の「3」を中心に読み、公取委はどのような市場にどのような弊害があり得ることを問題視したのかを、140字程度で説明してください。
事前質問等
授業準備のための一応の回答締切り:5月5日(木)15:00
成績評価におけるプラス評価があり得る締切り:5月6日(金)10:30
Slido
(終了)
slido.com #
対面コマの主な内容
段ボール用でん粉審決
審決等データベースで「平成25年(判)第30号」のPDFを入手
審決書本体2〜5頁と審決案公表版72〜80頁だけでよい。
PDF冒頭の頁番号の読み替えも参照
質問があれば、という感じで短時間で。
Booking.com
公表文PDF
公取委の令和4年3月16日の「報道発表資料」のHTMLと同じ内容を公取委がPDFにしたもの
HTMLページの下のほうにある。
「参考」は授業では使わない。
お題の回答や質問を中心に比較的短時間で。
R2相6「事務用機器メーカー15社による共同配送」
相談事例集PDF
総論を含めたおさらいであり、時間をかけて読む
素材
スーパー店内アナウンス「この商品はメーカーさんから値段で売らないように言われているんです」
Booking.com:お題回答
コメント
いつも言うことですが、ここで修正的コメントをするのは、今後の思考や書き方の修正のためのものであり、成績評価においてネガティブな意味を持つものではありません。成績評価においてはプラス(ポジティブ)面のみを加算することがある、これまでの授業を踏まえてしっかり考えて文章にまとめようとしているかどうかをみる、ということにしています。修正的コメントの対象となることは、プラス面の不存在を意味しません。(そろそろ、いちいち言うのはやめますが、今回は成績評価対象となる初回でもあるため、改めて書いておきました。)
宿泊予約サイト運営業者及びこれと契約を結ぶ宿泊施設運営業者を供給者とする垂直的な市場
事後回答 独禁法の市場では、常に、競争関係にある者は「水平」(図を描くと横に並ぶ)に並びます。垂直的な取引が、水平的な競争が行われる市場にどのように影響するか、を論じます。
供給者が宿泊予約サイトを利用したい宿泊施設運営業者で需要者が宿泊プランを掲載したい宿泊予約サイトの運営業者である日本国内の宿泊プラン市場
解答例
宿泊予約サイト運営業者を供給者とし宿泊施設を需要者とする宿泊予約サイトの市場において、他の宿泊予約サイト運営業者が値下げ等の行為を行いにくくなることにより、既存サイト間の競争停止が起きたり、新たなサイトに対する他者排除が起きたりする弊害を問題視したとみられる。
(宿泊者に対する競争(宿泊者を需要者とする市場)も書ければよいが、公取委が明確には言及しておらず、書いても書かなくてもよいような出題とした。)
質問
事前授業で説明されていたとは思うのですが、今回のBooking.comの事例においてブランド内競争ブランド間競争のどちらが問題になっているのか混乱しました。売る競争、買う競争が入れ替わると混乱する傾向にあるので、その点も踏まえて再度解説していただければ幸いです。
Booking.comの公表文についてです。違反被疑行為による影響のところで、2つ問題になった事例が挙げられていました。下の事例から何を読み取ればいいのかが分かっていません。当該市場においてはやはり値段が重大な要素であり、他の部分で差別化を図ろうとしても難しいということでしょうか。
公取委のBooking.comの公表文では宿泊予約サービスの市場において、価格維持効果が生じることが問題視されていると思ったが、宿泊施設間での競争も価格維持効果があり、競争が制限される恐れはないのか。/ 宿泊予約サイトごとに掲載する価格が固定される以上、あるサイトで期間を決めて値引きをするといった戦略が取れなくなり、現在の価格から値引きされないのではないかと思い、価格維持効果があると思った。もっとも、宿泊予約サイトからの予約率が低く、自社サイトからの予約が多いなどの事情があれば、ナロー型の同等性条件であれば、価格維持効果がなく、競争が制限されることもないのかとも考えた。
その他の質問
意思の連絡
9k96頁⑶ⅱについて質問です。意思連絡の内容が詳細に認定されない場合、その連絡が値上げに関する「意思の連絡」とは認定できないのではありませんか。
事後回答 詳細に認定できないものが何であるのか、という問題だと思います。価格の合意の有無が問題となっている場合、価格の合意の内容が漠然としていたら問題だと思われますが、価格の合意の内容は必要程度には明らかになっており、ただ、それが何月何日だったか、場所はスタバだったかドトールだったか、A社の出席者は誰だったか、ということまで明らかでなくともよい、ということです。
R2相6 共同配送
この部分の授業は記録に失敗したので、話したポイントのみをメモしておきます。
川下市場
(本件では川下の事務用機器Aの市場)
(本件では川上市場も出てくるので、それとの対比で、川下市場と表現。)
一般論
業務提携の場合は、事業の一部の共同化が市場に影響を与えるかどうかを検討する。
事業の一部の共同化それ自体によって弊害がもたらされないか
内発的牽制力の大小(共通化割合の小大)に特に注意しながら、弊害要件総論の流れに沿って検討する。
注意書き
相談事例集は「協調的な行動が助長されやすくなる」か否かを論じているが、これは、業務提携参加者間の内発的牽制力を論じているもの(協調的行動を助長=内発的牽制力が低下)
通常、公取委も含め、協調的行動、と言っているのは、業務提携に参加していない他の供給者からの牽制力がないことを示す一つの考慮要素として出てくるもの。
本件では、合計シェア100%の15社による業務提携なので、他の供給者による牽制力は出てこない
業務提携を契機としてハードコアカルテルが起こらないか
情報遮断措置があれば完璧
業務提携参加事業者の市場シェアが低ければ必要ないかもしれない
本件への当てはめ
本件では共通化割合が小さい
ハードコアカルテルを予防する措置がとられている
川上市場
(本件では、運送サービスを買う市場=「運送サービスの調達市場」)
共同購入の場合は、それが川上での買う競争に影響を与えるかどうかも検討する。
相談事例集が、物流提携なら川上市場も見る、というように丸暗記を迫るような書き方をしているのは適切でない。(元になった報告書も同様)
本件では、15社が、物流(運送)を外注している=他から購入している、という会社ばかりなので、共同物流=共同購入、となり、川上市場の検討も必要となる、ということ。
本件への当てはめ
事務用機器Aの運送は、通常の運送で足りるものであるので、Aのための運送は、他の一般の荷物の運送との間でも、運送を買う競争関係にある。したがって、Aの物流提携は、運送を買う競争に影響を与えない。